理由も思い
凛と言い放たれた。
「ですが…」
「そんなに俺を信用できないんですか」
追い詰められて、松下はうつむいた。信用できないのではない。彼は嫌というほど自分によくしてくれる。愛されていると感じないわけではない。ただそこで…自信がない自分の心が、永遠や確実といった言葉をお守りにできないというだけだった。
仕事を辞めてまで神戸に来てくれても、一緒に住んで蜜月を過ごしても、心の中には拭いきれない不安がある。愛されていると感じるのも、ひょっとしたら思い込みの激しい自分の勘違いではないかと思ってしまう。例えばある日、突然に彼がいなくなってしまったとしても、鈍感な自分は彼の出ていった当たらないかもしれない。
「一緒に寝て、同じものを食べて、俺はこんなに長く誰かと一緒に過ごしたことはない」
それは松下も同様だった。
「先生のために食事を作って、選択して、部屋の掃除をして…」
「僕は何もしなくていいと言いました」
「…それでも俺は先生の嬰兒敏感ためになると思ったら、なんでもしたくなる」
少し乱暴に髪をかき乱されて、顔を上げた。彼が切ないような、そして笑っているような顔でただでさえ落ち着きの悪い髪を弄ぶ。慈しむような指の動きに、絶対に言えないと思っていた頑な心が崩れる。
「少し前、妹からこちらにいる友人を僕に紹介したいという電話がありました」
彼の顔を見られず、視線を逸らした。
「僕は君のことを妹に話せなくて、女性を紹介したいと言われた時もはっきり断ることができませんでした。それから何度も彼女に電話をしたのですが、話を聞いてはもらえませ嬰兒敏感んでした」
喋れば喋るだけ、虚しさが込み上げてきた。
「今日は久しぶりに妹のほうから電話がかかってきて、紹介したいという女性と会う手はずを整えたと言われました。断ってくれるよう頼んだのですが、聞き入れてもらえなかった」
事実を吐露したあとで、おそるおそる顔を上げた。そこには予想していた、優柔不断な男に対する軽蔑の眼差しはなく、彼は首を傾げていた。
「それだけ?」
拍子抜けした声の響きに、胸が絞られるように痛んだ。自分がこれほど思い悩んだ事柄も、彼にしてみれば『それだけ』ですませられる事柄だったの嬰兒敏感かと思うと虚しかった。
「それはお見合いですか?」
淡々とした調子で彼は聞いた。
「そんな大層なものではなくて、一緒に食事をする程度です」
彼はフッと息をつくのが見えた。
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